鏡面仕上げの塗装手順

用意しておく物

  1. 使用する塗料
    作品の使用目的や、好みに合った塗料を選んでください
     
  2. 塗装用具
    和信ペイントのラックハケをお勧めします
     
  3. 塗料に適したうすめ液
    塗料容器に適したうすめ液が記載されています。塗装用具を洗うときにも使用します
     
  4. 研磨道具
    240番と400番のサンドペーパーが必要です。空研ぎサンドペーパーを推奨します
    鏡面仕上げには800~2000番の耐水サンドペーパーやコンパウンド、柔らかい綿布か脱脂綿も使用します
    脱脂綿はカット綿ではなく、塊をちぎって使います
     
  5. ウエス
    いらなくなった綿布で代用できます。タオル地は埃が出やすいので避けてください
     
  6. マスキングテープ
    塗りたくない場所を保護するために使います
     
  7. 新聞紙やビニールシート
    周辺の汚れ防止に使います
     
  8. ゴーグル、マスク、軍手やビニール手袋など
    塗料の飛び散りによる汚れ防止に使います
     
  9. 汚れてもよい服装
    衣類に塗料がつくと、きれいに落とせません

塗装を避けた方がいい環境

  1. 雨天や、湿度の高い曇天
    塗料が乾きにくくなったり、表面が白く濁ることがあります
     
  2. 極端に気温が高い日
    塗料の乾きが早すぎるため、失敗しやすくなります
     
  3. 極端に気温が低い日
    塗料が乾きにくくなります
     
  4. 強風
    塗装面にゴミがつきやすくなります

工芸うるしの塗装手順・鏡面仕上げ(油性・水性共通)

  • 鏡面仕上げには、時間と根気が必要です。何度も塗装と研磨を繰り返す必要があります。作品を仕上げるまで時間的な猶予がない方や、簡単に済ませたい方にはあまり向いていない塗装手順ですが、じっくりと丁寧に仕上げた作品は美しく、重厚感があります
  • 油性の工芸うるしを塗装する場合、1回目の塗装に“工芸うるし専用下塗り液”を使って、乾燥時間を短縮することもできます
  • この資料では、未塗装の平滑な木部を工芸うるし(油性・水性)で鏡面仕上げにする工程をご説明しています。彫刻を施した作品などにそのまま応用することはできませんので、ご注意ください

 

1.素地調整

鏡面仕上げを目指す場合、素材となる木に凹凸があるまま塗装を始めてしまうと、それをならすことに時間を取られてしまいます

時間のかかる鏡面仕上げを効率よく進めるポイントは、塗装前の素地調整を丁寧に行なうことです

塗装前に充分な研磨をし、場合によってはパテなどを使って傷やヘコみを埋めておくことも有効です
(ただし、透明感のある色で塗装する場合は、パテを使った部分が透けて見えてしまいます)

また、との粉を使って目止めをしておくことも有効です

 

木地の研磨は、240番の空研ぎサンドペーパーを使って、木目に沿って行ないます

カンナをかけてある木材は表面がきれいに見えますが、塗料が染み込みにくい状態になっているので、しっかり研磨してください

研磨が終わったら、研磨カスをきれいに取り除きます

 

パテの使い方は、実際に使用するパテの説明をご確認ください

メーカーによっては上塗りができない種類もございますので、原則として“上塗り可能と明記されている木工用のパテ”をご利用ください

との粉での目止めにつきましては、別資料をご参照くださいませ

 

2.工芸うるしをよく攪拌する

一部の成分が沈んでいるため、塗装前にしっかり混ぜておきます

油性の工芸うるしは塗料が固いので、ペイントうすめ液で固さを調整します

1回目の塗装は塗料に対して40%程度うすめ液を加えてください

油性の工芸うるしは液温が低いと固くなる性質があるため、冬季などはあらかじめ容器を暖かい部屋に移し、常温に戻しておくことをお勧めします

また、油性の工芸うるしは液面に膜を張りやすい性質があるので、塗装前に添付の網で漉してください

網は濾過が終わったらすぐにペイントうすめ液で洗ってください

 

水性工芸うるしは基本的に原液のまま使用できますが、夏場など気温が高い時期や湿度が低い環境では、水分の蒸発が早いため塗りにくく感じる場合があります

この場合は、水(水道水)を加えて調整します

薄める比率は多くても5%程度です

 

一見混ざっているように見えても顔料が沈殿していることがあります

塗ったときの色味がおかしい、色づきが薄く木目が隠れにくいと感じた場合は、割り箸等を使って容器の底からよく混ぜてみてください。

 

3.ハケで木目に沿って塗装する(1回目)

一気に厚みをつけないように、薄い層を塗りつけるイメージで、均一な厚みになるように塗装します

特に透明感のある色を塗っている場合は、厚みの差が色ムラとして現れるので注意が必要です

一筆書きにする必要はなく、乾く前であれば一度塗ったところを再度塗り直しても問題ありません
(乾きかけた場所を無理に直そうとするのは逆効果になります)

未塗装の木部に工芸うるしをを塗る場合、1回目の塗装は木の吸い込みを止めるための塗装になるため、乾くにつれてつやがなくなっていきますが、これは正常な状態です

 

4.完全に乾かす

容器に記載されている乾燥時間は20℃の環境で乾かした場合の目安であり、塗りつけた量が多い場合や、湿度が高い場合などには表記以上に時間がかかることもあります

 

5.塗装面を軽く研磨する(1回目)

400番の空研ぎサンドペーパーを使って、木目に沿って軽く研磨します

力を入れて研磨すると塗った塗料を剥がしてしまうため、軽い力で優しく研磨してください

この時、工芸うるしが乾いていれば粉状の研磨カスが出ますが、乾いていない面を研磨すると、消しゴムのカス状の固まりの研磨カスが出ます

固まりの研磨カスが出た場合は、もう少し乾燥させてください

未塗装の木に1回だけ塗装した場合、塗装前よりも表面がザラついていることがあります

これは最初の研磨で取り切れなかった木の繊維が、塗料を吸って起き上がったまま固まったためです

研磨することでこのざらつきを取り除き、表面を平滑にします

ハケ目や垂れなど、塗料の厚みによる凹凸は、研磨でできるだけならしておきます

研磨が終わったら、研磨カスをきれいに取り除きます

 

6.ハケで木目に沿って塗装する(2回目)

基本的な注意点は工程3と同じです

ほとんどの場合は木の吸い込みが止まっているため、1回目よりも少ない量で塗ることができます

油性工芸うるしの場合、2回目以降の塗装では、塗料に対して10~20%程度ペイントうすめ液を加えてください

また、塗装前に添付の網で漉し、網は濾過が終わったらすぐにペイントうすめ液で洗ってください

 

7.完全に乾かす

乾燥に関する注意点は工程4と同じです

 

8.塗装面を軽く研磨する(2回目以降)

研磨に関する注意点は工程5と同じです

表面に膜がつき始めているため、研磨すると表面に細かい傷がついて白く濁ったように見えますが、上塗りすることでこの白さは解消されます

上塗りしても傷が気になる場合は、研磨に使うサンドペーパーの番手をより細かいものに切り替えます
(サンドペーパーは番手の数字が大きいほど細かく、小さいほど粗い)

  • 工程6~8を繰り返して表面に充分な厚みをつけてから、工程9に移ります。工程9に移る場合は、工程8の研磨はせず、3日以上しっかりと乾燥させます

 

9.水研ぎで平滑な面を作る

鏡面仕上げにするためには、表面の凹凸をなくす必要があります

人が手でサンドペーパーを持って研磨しても、無意識に凹凸に沿って動いてしまうことがあるため、何度か塗り重ねて厚みをつけてから、表面を平らにするため“水研ぎ”をします

水研ぎには800~2000番の耐水サンドペーパーを使います

2000番などの細かい番手で根気よく研磨する方法もありますが、目に見えて凹凸がある場合は800番から始めて、少しずつ細かい番手に切り替えていく方法もあります

平滑面を出す目的で水研ぎする場合、サンドペーパーは平らな木の板などに巻き付けて使用します

市販の研磨ブロックを使う方法もありますが、工作品などの小さな作品には、消しゴムを使う方法も有効です

研磨をする際に注意すべきポイントは、角の部分は研磨が強くかかりやすいという点です

木箱などの角の部分は、研磨しすぎないように注意してください

 

水研ぎは、耐水サンドペーパーを水で濡らし、塗装面が濡れている状態で、力を入れて研磨します

何度か塗装を繰り返している面は、つやのある状態に仕上がっています

 

表面を水研ぎしてから水分を拭き取ると、研磨された部分は白く濁り、研磨されていない部分はつやのある状態になります

全体に研磨をかけたとき、つやのある部分が残っている場合は、その部分が周辺よりもへこんでいると推測されます

一部分だけ木の地肌が研ぎ出されてしまう場合は、その部分が周辺より盛り上がっていると推測されます

木の地肌が出てしまった場合は、その時点で水研ぎをやめ、空研ぎで表面を平滑にすることをお勧めします

 

表面に凹凸が残ったままコンパウンドで磨くと、光の反射がばらつくため、磨き上げたときに悪目立ちしてしまいます

高低差がなくなるまで塗装と研磨を繰り返すか、一度徹底的に研磨して全体の高さを均一にしてから塗装し直すことをお勧めします

表面が平滑になってから、次の工程に進みます

 

10.コンパウンドで磨く

柔らかい綿布や脱脂綿にコンパウンドを取り、力を入れて表面を磨きます

この際、爪を立てないように注意してください

また、硬さのある布地で磨くと、布の繊維によって表面に傷がつくことがあります

繊維の傷が気になる場合は脱脂綿を使って磨いてください

 

コンパウンドにも目の細かさで種類があり、和信ペイントでは“極細目”のコンパウンドを販売しています

より目の細かいコンパウンドを使いたい場合は、カー用品売場にある車用のコンパウンドを検討してください

 

コンパウンドには“研磨剤”と呼ばれる成分が入っており、この成分が水研ぎによって残ったわずかな段差を削り取り、なくしていきます

和信ペイントのコンパウンドは歯磨き粉のようなペースト状で、この研磨傷をなくす工程に適しています

車用のつやだしコンパウンドには液体の極めて粒子が細かいタイプがありますが、研磨傷が残ったまま液体コンパウンドを使っても、線状の傷が残ってしまうことがありますので、コンパウンドも段階を踏んで細かいものに切り替えてください

 

最後に何もついていない脱脂綿で表面を磨いて、完成です