塗装済みの木部へのニスの塗り方
古い塗料を剥がすか、上塗りするかを判断する
古い塗料をすべて研磨などで削り落とし、木の地肌を出すことができれば、塗り替えるニスは目的に合ったものを選べば問題ありませんが、古い塗料の上から塗る場合は、目的に合っていて、かつ相性の良いものを選ぶ必要があります
皮膜を作る塗料同士を塗り重ねる場合は、“塗ることができるか、密着するか”などの相性を確認する必要があります
相性が悪いニスを上塗りすると、せっかくきれいに塗装しても、後で剥がれてしまうことがあるためです
この資料では、“古い塗料を剥がす場合の研磨手順”と、“古い塗料の上から塗る場合の密着性の確認手順”をご説明します
ニスの塗り方につきましては、別資料をご確認くださいませ
古い塗料をすべて剥がす場合
1.粗い研磨紙で効率的に剥がす
サンドペーパーには目の細かさを表す数字が書かれています
この数字は数が小さいほど粗く、数が大きいほど細かくなっています
一例を挙げると、60番は非常に粗く、2000番は非常に細かいサンドペーパーです
塗料を剥がす際には、粗い番手(80~120番など)のサンドペーパーを使うことをお勧めします
研磨するときは、木目に沿って行なってください
木目が横にあるところを縦に削らない程度で結構です
サンダーと呼ばれる研磨機を使用することも効率的です
2.240番のサンドペーパーで木の表面を調える
粗いサンドペーパーで研磨すると、木の表面に傷が残ってしまします
この傷を消すために、240番ぐらいのサンドペーパーで表面をもう1度研磨します
サンダー(研磨機)で研磨した場合も、機械は円を描いたり上下左右に動いていることが多いので、240番のサンドペーパーで表面を調える研磨は有効です
固く絞った水拭きで表面を掃除したとき、濡れている状態の木に目立つ研磨傷があるときは、もう少し研磨してください
古い塗料の上から塗装する場合
塗料同士を塗り重ねる場合で、しっかり密着した状態が必要な作品(テーブル、棚、床など)は、あらかじめ“イメージ通りに塗れるか” “しっかり密着するか”を確認して、問題がない場合のみ塗装してください
触れることが少ない、飾っておく作品の場合は“イメージ通りに塗れるか”を確認して、問題がない場合のみ塗装してください
1.下地の処理
必ず目立たない部分で試し塗りしてください
ニスを上塗りする場合、研磨せずに塗るよりは、研磨して表面に薄く傷をつけてから塗った方が密着しやすくなります
研磨せずに塗るとはじかれてしまうニスも、研磨することではじかれなくなる場合もありますので、状況に応じて行なってください
研磨をする場合も研磨をしない場合も、事前によく掃除をしておいてください
特に台所などは油汚れがついていることもありますので、充分に掃除をしてください
ワックスを塗装してあると、ニスが密着しにくい傾向があります
ワックスを塗ってある作品は、ワックスを剥がしてから試し塗りをしてください
研磨する場合は、320~400番のサンドペーパーを使用します
塗料を剥がすためではなく、表面に薄く傷をつけるための研磨です
表面に研磨傷がつくと、白く濁った色調になりますが、ニスを上塗りすることで白さは消えます
(一時的な確認であれば、水拭きをして濡れているときだけ元の色に戻ります)
研磨が終わったら、研磨カスはきれいに取り除いてください
2.イメージ通りに塗れるかの確認
研磨した部分に、使用するニスを塗ります
この時確認するのは、“はじかれずに塗れるか”、“下地が溶ける、白く濁るなどの悪影響がないか”の2点です
もともと塗ってある塗料が溶けやすいものを上塗りしてしまうと、下地を冒してしまうことがあります
ニスには大きく分けて4つの分類があり、“水性<水溶性<油性<ラッカー”の順に溶かす力が強くなります
(特殊な塗料はこの限りではありません)
水性のニスは“水に濡れると溶けるもの”以外はまず下地を冒すことはありませんが、ラッカーなどはかなり溶解力が強いため、注意が必要です
飾っておく作品であれば、ここまでの確認で問題が出なければ使用できます
3.密着しているかの確認
実用的な作品など、しっかりした密着性が必要な場合は、セロハンテープを使って密着しているかを確かめます
まず工程2で塗装してから、7日ほどしっかり乾かします
乾燥期間が短いと、確認テストで剥がれやすい結果になります
充分に乾かしたら、ニスを塗った部分にセロハンテープをしっかりと貼り付けて、一気に引き剥がし、この結果で密着性を判断します
《結果》
○:セロハンテープのみが剥がれ、塗装面には何の異常もない
△:セロハンテープにニスが一部分だけついている、または塗装面で膜に浮きがある
×:セロハンテープに上塗りしたニスがフィルム状にくっついている
結果が○の場合は、しっかり密着しており問題なく使用できます
結果が△の場合は、ある程度は密着していますが、強い力を加えると(物を上で引きずるなど)剥がれる可能性があることを許容できれば使用できます
結果が×の場合は、ほとんど密着していないので、そのニスでは上塗りしないことをお勧めします
この確認テストを行なったとき、まれに古い塗料ごと剥がれることがあります
この場合は“塗料同士はしっかり密着しているが、古い塗料が剥がれやすくなっている”という判断になり、上塗りしてもいずれ下地から剥がれてしまう可能性があります
下地から剥がれてしまった場合は、古い塗料を研磨で剥がしてから塗り直すことをお勧めします
ここまでは塗料同士の相性を中心に説明して参りましたが、もう一つ、重要な確認点があります
“上塗りしたときの仕上がりが好みに合うか”です
ニスは透明性のある塗料で、下地の色が透けて見える性質があります
一例を挙げると、暗い色調の木材に明るい色のニスを塗っても、本来の色調には仕上がりません
予想と違う仕上がりになることもあると思われますので、試し塗りの際に充分確認してください